文字の海。言葉の星。

▽ しゃかい の ごみ

もしものはなし。

もしも。ねぇ、もしもよ。


微炭酸ソーダのぱちぱち弾ける海の底の、お砂糖でできた貝殻のお城に住んでいたら。

水色と白色と金色のクレヨンを少しずつ混ぜあわせた腰まで届くような波打つ髪をしていたら。

すみれ色の夜空に輝く星を一つ残らず集めて、はちみつで固めたぱっちりとろける瞳だったら。

真っ二つに醜く裂けた2本の足の変りに、
エメラルドを薄く伸ばした鱗と小さな白い真珠の欠片を沢山敷き詰めたお魚の尻尾が生えてたら。

絵本の中に住んでいたら。
お姫様だったら。

わたしがもっとかわいかったら。

あなたは私を選んでくれたかしら。
あなたは私を愛してくれたかしら。

夢を見ていたい、夢をみていたい。
有りもしない夢。
あなたが私の手を取って、抱きしめて、私の輪郭を指先でなぞって、キスで殺してくれる夢。

全部嘘っこだよ。もしもの話。

さよならマーチ。

朝起きる。

カーテンから入る日差しがベッドでゆらゆら揺れて、あったかい海の底にいるみたいだ。

あたしはうーんと伸びをしながら人魚姫になって、光るような真っ白いシーツに波を立てる。

今日も世界は平等で、誰にでもすべからく温かくて優しい。


死んじゃうにはもってこいのだ。


さぁカーテンを開けて顔を洗おう。
石鹸の香りを身にまとって可愛いお洋服で着飾ろう。
学校なんていいや、今日は。

だってもったいないじゃない。

空は青いしお日様はぽかぽかだし、こんな日に全てにさよなら出来たらあたしはきっと雲か小鳥か、天使になれるような気さえするわ。

だから行くの。この窓から広いところへ。

パパもママも友達のユリエも知らない、私もまだ知らない場所へ。長い長いピクニックをしにいくようなものね。

リュックも完璧。

それじゃあ皆さん、ごきげんよう。

3、2、1、


ジャーーーーーーンプ!!!!!!

例えばこんな、

母さんは僕がいないとだめなんだ。

僕がいないとダメだから僕を殴るんだ。

母さんは自分の手が痛くなるまで僕を殴って、僕の鼻の穴の片方から生温い赤い血がツゥッと伝ってきたところでハッとして小刻みに震え出す。

そしてさっきの罵詈雑言を塗り潰すみたいにごめんねごめんねと細い声で唇を震わせながら泣くんだ。

僕をぎゅっと抱きしめて。

僕はその間母さんに肩を貸して窓から濃紺の空を見上げる。
星を数えたりなんかもする。

それから少し泣く。

眼の奥がつんと痛くて、母さんに殴られた場所だけがカッと熱くて、心は引きちぎれそうなほど苦しくて、どうしようもなくて。

そうか、これが愛か。

安眠法。

不安でたまらない、自分が分からない、価値ある人間でいたい、認められたい、消えてしまいたい、

色んな思いが交錯して夜眠れなくなるあなたへ。

とっておきの方法をご紹介。

まずは胸に手を当ててゆっくりと撫で下ろしてあげましょう。
次に自分の心に言い聞かせてあげるのです。小さな子供に言うように、自分自身を慰めるように、飛びっきり優しく。

大丈夫だよ。大丈夫大丈夫
だれもあなたを愛してなんかいないよ
最初から一人ぼっちだったよ
初めからあなたの求めているものなんかなかったんだよ
だから大丈夫

そうして程よく絶望したら
今度は夢を見ましょう。
いつまでも醒めない夜の夢。

朝なんか来ないよ。
このままずっと目覚めないよ。
もう悲しくならなくていいんだよ。
だって夜は終わらないもん。
朝なんか来ない、来ないよ。

するとあんなに恐ろしかった夜明けは本当に来ないような気がして、いつの間にかぐっすりと眠ることができます。

眠れぬ夜の安眠法。

片想いろまんちっく。

私の好きな人を紹介します!

サラサラのショートカットがよく似合う丸顔の子で笑った時の八重歯がとっても可愛い子。
身長は私より低いけど元気にちょこちょこ動く仕草は小動物を連想させて思わず抱き締めたくなるの。

女の子って世界で一番可愛い生き物だと思うんだけど、私からすればその中でも彼女が一番。


あー、あのおでこに、目蓋に、鼻に、頬に、柔らかそうな唇に、体中にキスできたら。
そうして私があの子を守ってあげるの。ずっと傍で愛してあげるのよ。そしたらあの子も同じくらいの愛情で返してくれるの。
なんて幸せなのかしら。

だけどね、これは夢。あくまでも私の妄想。

だってあの子にとって私は使い勝手の良いオトモダチでしかないんだもん。
あの子が遊んで欲しいと思った時に遊んであげる、話を聞いて欲しいと思った時に聞いてあげる、結局都合の良い存在なのよね、私。

でも、それでもいいの、私。
寂しさを埋める何か(あるいは誰かかも)の代替にされたっていいの。
好きなの、大好きなのよ。
私じゃダメ?なんて面倒臭いことは聞かないから傍にいたいの。
いつかこの想いが届くって信じてる。

ロマンチックじゃない?

(君へ抱く)恋はロマンチック、(君へ向ける)愛はグロテスク。

片想いはろまんちっく。

メルヘン青春。

お友達は人魚姫。
恋人はユニコーン

お空はいつだってピンク色。

だから平気なの。

他の人になんて言われようと
パステルに塗り替えた上履きに画鋲を入れられようと
カロンのシールを貼っつけた机に少し変わったイラストを描かれようと
痛くも痒くもないの。

だってあたし、可愛くいたいのよ。
それがあたしなんだもん。
可愛くなきゃあたしはあたしじゃないの。

髪を切られたってお気に入りのリボンは可愛いままだし
体操服が無くなったってふわふわのパニエは制服のスカートの中でいつも可愛いまま。

あたしは可愛いあたしが一番好きなの。

いつだって自分が好きな自分でいたいのよ。

好きなことをするのってそれなりに大変だったり息苦しかったりするものじゃない?

だから先生やパパやママにはきっとあたしの気持ちなんて分からない。

でもね、いいの。
あなたたちに分かってもらえなくてもあたしはあたしだもの。

リボンにレースにピンクのドレス。
ピンクの空にパステルパープルの海で泳ぐ人魚たち。
紺色の夜の闇を星を引き連れて駆け抜ける大好きなユニコーン

あたしの世界にはそれさえあればいい。

なにもいらない。

メンヘラプソディー

あのね!あたしね!!

生きてるって実感したいわけじゃないの!

そう、そうなのよ!

許されたいの。許してほしいのよ。

誰に? わかんなーい!

だってだってだって、痛みって一番分かりやすいじゃない?
手っ取り早いじゃない?はい、君の罰だよーって、そんなかんじで。

お手頃な痛みに飢えているの。
腕にアレなアレが沢山増えていく度に他の誰かになれるような気さえしてくるの。

ンン、多分だけどファンシーなお薬と同じ感じね。
どんどん満足できなくなってだんだん回数増えてくの。

ハイッ!あたし今!!ちゃんと罰されてます!!!





だ  
    か
      ら 愛してくれ。