例えばこんな、
母さんは僕がいないとだめなんだ。
僕がいないとダメだから僕を殴るんだ。
母さんは自分の手が痛くなるまで僕を殴って、僕の鼻の穴の片方から生温い赤い血がツゥッと伝ってきたところでハッとして小刻みに震え出す。
そしてさっきの罵詈雑言を塗り潰すみたいにごめんねごめんねと細い声で唇を震わせながら泣くんだ。
僕をぎゅっと抱きしめて。
僕はその間母さんに肩を貸して窓から濃紺の空を見上げる。
星を数えたりなんかもする。
それから少し泣く。
眼の奥がつんと痛くて、母さんに殴られた場所だけがカッと熱くて、心は引きちぎれそうなほど苦しくて、どうしようもなくて。
そうか、これが愛か。