可愛い手首。のはなし。
私の手首はとっても可愛いの。
私のことを何でも知ってる、わたしのてくび。
私が自分を見失いそうなくらいどうしょうもない時、私の手首が教えてくれる。
例えば、紙の上に落ちた涙はクレヨンで塗り潰せるけど、心の痛みはクレヨンじゃ無理。
絵の具でも、パステルでも、鉛筆でも、無理。
だけど手首を透明な赤で塗り潰すと、それは心の痛みの代わりになってくれる。
私の手首の赤い糸は、来世に繋がっている。
私が本当はどんな姿をしていて、どんな声をしていて、何を思っているのか。
それは私の手首だけが知っている。
死に取り憑かれる夜も、絶望する朝も、どっちの恐怖も手首が慰めてくれる。
安っぽい痛みで誤魔化されてくれる。
そうしてまたカミソリとキスをする。
赤いリボンをたくさん結んでもらう。
可愛い手首、わたしのてくび。