文字の海。言葉の星。

▽ しゃかい の ごみ

世の中が私を仕立て上げた話。


あたしは生まれ変わったら鳥になりたい。

だってそうすれば自由に空を飛べるから。




最初は良かったの。そう、最初のうちは。


いつもニコニコしていて、明るくて元気。どんな時でもポジティブ。とにかく笑顔。

世話焼きで凄く良い子。とにかく面白い子。


それ以外のあたしなんて要らないんでしょう


いいの、ずっとそうやって生きてきたから。いいのいいの、慣れっこだし。


最初は良かった。そう、最初のうちは。


かけっこで負けて悔しくたって、平気だよって笑って。

クラスでいじめられてる子がいたら興味なんてないけど、大丈夫だよって笑って。

進学して新しい教室で不安と緊張ばかりなのに、周囲の為にバカなことをやって笑って。

なんにも面白くないけどいつもいつも笑って。

だってそうしたらあなたたちだって笑ってくれたじゃない。

それ以外のあたしなんて要らないんでしょう。


全部変わったのはクラスのミカちゃんの1言。たったの1言。


クラスメイトが事故で死んだ。

だから笑った。仕方無いよ、こういうこともあるよって。

そしたらミカちゃん、あたしを指差してオトモダチとひそひそお話してたの。 

「なんかあの子変じゃない。」

「気持ち悪い。」

「頭おかしいわよ。」

って。


ウサギ小屋のウサギが1羽死んだ時にもあたしは同じことをした。


そしたら、そうだよねって言ったじゃん。いつまでもクヨクヨしてても仕方ないよねって。

あたしの笑顔を見るとなんか元気出る、ありがとうって。ありがとうって言ったじゃん。


ウサギとヒトの命は、魂は、運命は、一体何が違うというのよ。


でもね、ミカちゃんがそう言い出したらもう止まらない。

たったの1日であたしはとっても良い子から異常な子に変身を遂げたのでした。


今日なんか、あんたは本心が見えないから気持ち悪い、なんて言われて水かけられた。あー寒い。

机には、上っ面だけの偽善者なんて素敵なペイントされちゃったりして。



うーん、困ったな。


だってだって、あのね。




あたしというあたしを殺したのはお前らなんだから。


お前らがあたしを殺したんだ。


あたしという人格、あたしという心、あたしという人生。


望んだのはお前らの方じゃないか。

良い子じゃないあたしなんて、笑顔じゃないあたしなんて、そんなの要らないくせに。


ずっとこうやって生きてきたのに。

お前らの望むあたしを、あたしは生きてきたのに。

今更、歪で得体の知れない仮面の下の私を、あたしにどうしろというの。






あたしは生まれ変わったら鳥になりたい。