文字の海。言葉の星。

▽ しゃかい の ごみ

ポップでキュートな彼女たちの恋愛事情。

このお部屋の棚には秘密がある。

あたしが飾り付けした素敵なお部屋。

白とピンクのカーペットに、レースでヒラヒラした薄い綿菓子みたいな天蓋付きのベッドに、ハートの形を模したソファーに、お姫様が使ってるようなクローゼットとドレッサー。
可愛いものをどっさりぎゅーっと詰め込んだお部屋の、一際可愛い白い棚。

あたし知ってるの。
その棚の中にはガラスで出来たキラキラ光る小瓶があって、それでその小瓶の中にはこれまたちっちゃくて可愛いお薬が沢山入ってるってこと。

だめだよ、いくら隠し場所を変えたって。
あたしは何でも知ってるの、しーちゃんのことならね。

しーちゃんが帰ってくる前にお薬の瓶詰めをそっと手に取って中身を手のひらに広げる。
白とドぎついぴんくのコントラストがとってもキュート!
手の上の無機質な塊に胸をわくわくさせながらあんぐりと口をあける。

「いただきまぁーす!」

「ただいま。」

あ、しーちゃん帰ってきた。あたしのピンクのツインテールとは違って長くて真っ黒で真っ直ぐ腰まで届く髪の毛、白い肌。可愛い。可愛い可愛い可愛い可愛いすきすきすきすきだいすきだいすきだいすきねぇ会いたかったよあたしのしおりあぁああ今日は何してたの何考えてたのあぁああぁああああ


「しーちゃんお帰りっ!」

しーちゃんが帰ってきたのが嬉しくて手に乗ってた薬を放り投げてしーちゃんの所へ駆け寄る。
一杯あった薬は無数の流れ星みたいに宙を舞ってバラバラと床に落ちた。

「あーあ…。この量…、致死量ギリギリね。また私の飲む分が無くなったわ。床に落ちたばっちいのは飲みたくないし。」

しーちゃんの首に腕を絡ませて青白くて柔らかいほっぺに頬ずりしてちゅっちゅしていると呆れたような声が聞こえた。うーんやっぱり好き!!

「うふふ。だってしーちゃんは本当に死のうとするんだもの。」

死にたがりの可愛い可愛いあたしの彼女。できるならこのまま監禁して鎖で繋いであたししか見えないようにドロドロのぐちゃぐちゃにしてあげたい。うふふ。

「めろ子…、掃除も大変で、」
「ところでしーちゃん、学校はどうだった?」

話を聞けよ、という顔であたしを軽く睨むしーちゃん。やだなぁ、可愛いだけだよ、そんなことしても。

「………別にいつも通りよ。糞なクラスメイトにカバンを捨てられてバカ女たちに上履きに画鋲を入れられて足蹴にされたわ。」

………。

「へぇ…。それでしーちゃんは?泣いた?怒った?笑った?悔しかった?どう思ったの?」

あーあ、しーちゃんの悪いクセ。何度言っても分からないんだから。

「え?そんなの憎いに決まって、」

ダメじゃない、しおり。お仕置きだね。お仕置きしてもいいよね。うん、いいに決まってる。しおりだって私を嫉妬させたくてそんなこと言ってるんでしょう。

「本ッ当に!!しーちゃんは悪い子だなぁ!!あたし以外の人間に感情なんか向けちゃダメでしょう?」

しーちゃんの細くて折れそうな首をありったけの力をこめて締める。あたしの爪にしーちゃんの皮膚が喰いこんでくる。
元々真っ白なしーちゃんの顔がもっともっと真っ白に青ざめていって、そのうちしーちゃんのキュートな黒目がぐりんと上に行く。うふふ、可愛い。

「あ゛ッ…カハッ…!…ッ、ゥあ…」
「うん、分かってるよ。このまま殺して欲しいんだよね。」

あたしの可愛い死にたがり。意識が飛びそうになっているのかほっとしたような顔をしている。
分かってるよ、分かってる。
だけどね。

「はい、だめー。殺してあげなぁい♡」

「あっ…あっ…!!?」

突然手を離してあげるとしーちゃんは床に崩れ落ちて泣きそうなほど顔を歪めて残念がる。

「ゲホッ…、なんで、あんたいつも…っ!こ、ろしてくれるって、私があんたを愛したらころしてくれるって…ゲホッ!」

「うん。」

「なんで…。私あんたとキスもセックスもしてるのになんでよぉ…。」

「足りないよぉ、そんなんじゃ。ほら、殺してあげるからちゃんと愛して?」

天使みたいな笑顔を向けてあげるとしーちゃんは決まって絶望した顔をする。
まだ息が整わなくて微かに震えるしーちゃんの唇におもむろにキスする。

「んぅ…。」
「はっ…、ねぇしおり、ベッド行こうか。」

しーちゃんは何も言わない。シャイなんだからっ!
仕方ないからお姫様だっこして寝室へ連れてってあげる。

うふふ。ねぇ、早くあたしを愛してよ。
愛してくれたらずーっと離してあげない。

殺してあげるなんて嘘だよ、うふふふふ。
ごめんね、嘘つきで。ふふふふ。