眼球キャンディー。
彼女の眼はとても美しい。
琥珀色で、意志の強さを物語るかのように怜悧に輝いている。
惜しみない愛をその眼光に乗せて僕を見つめる。
2つの眼球は僕にとって月であり花火であり真珠であり、またとても甘美なキャンディーのようにも見える。
から、僕は彼女の右の目を抉り取ってそのままぱくりと食べてしまった。
ふわりとしたまぁるいキャンディーはぐにゃりと噛むとどろりと喉を滑っていった。
甘くて酸っぱくて苦くてしょっぱい。
恋だとか愛だとか好きだとかセックスだとか、そういう味だった。
彼女はびっくりしたのか残った左目とブラックホールみたいになった空洞で僕を見つめると何度か瞬きをした。
そしてにっこりと微笑むと僕を抱きしめて、そのまま鎖骨の辺りに思い切り噛み付いてきた。
僕の体は彼女の噛み跡だらけだ。
肉が体から引き千切られそうになる痛み。
この痛みこそ至福。
僕もにっこりと微笑むと彼女の頭を撫でた。
瞬間。冷や汗。意識を霞ませる僅かな眠気。隣ですやすやと眠る彼女。
さっき噛まれた場所に手を当ててみる。
痛くない。ここは噛まれてない。
心臓はまだドクドクと高鳴っているし、変な汗をかいているにもかかわらず妙な高揚感がある。
まさか、そんなことある訳ないのに。僕が彼女の目玉を食べるなんて。
枕元においてある水でカラカラになった口を潤すと、僕はまた目を閉じた。
そう。そんなことあるわけないんだ。
僕が彼女の目玉をまた食べることができるなんて。
だって彼女の目は2つとも僕が食べてしまったんだから。
何も入っていないアイホールを塞ぐように降りた彼女の目蓋は常人のそれとは違って少しばかり凹んでいる。
嗚呼、なんて愛しいんだろう。
おやすみ。また朝になると君は僕の肉を引き裂こうと歯を立ててくるんだろうね。
おやすみ。世界で一番愛しているよ。