文字の海。言葉の星。

▽ しゃかい の ごみ

死にたがりちゃん。


あー、死にたい。

それがあたしの口癖だ。

息子が母親殺したって今朝のニュースでやってた。
あー、死にたい。

朝ごはんのお味噌汁がしょっぱかった。
あー、死にたい。

学校へ行くと友達が話しかけてきた。上っ面のくせに。
あー、死にたい。

大好きなあの人に話しかけられた。今日は前髪全然キマってなかったのに。
あー、死にたい。

担任に呼び出された。志望校の推薦決まったって。なんの面白味もない人生。
あー、死にたい。

帰り道おっさんが5万でどう?って話しかけてきた。うっせーよ。
あー、死にたい。

今日も空は抜けるように青かった。
あー、死にたい。

帰ったらお母さんが泣いてた。幼馴染みのはーちゃんがいじめを苦に自殺したって。

へぇ。あっ、そう。

死になれてしまってるあたし。
毎日毎日テレビだの新聞だので遠い場所の誰かが命を落としたって騒がれている。

はーちゃんはそういう人たちと何が違うというのか。

はーちゃんが死を選ぶくらい苦しんでたいじめも、あたしにはその苦しさは分かんないし。
たぶん、あたしは今少しくらい悲しんでるんだろうけどそのうちはーちゃんは記憶のおもちゃ箱に埋もれてって私に忘れられるんだろう。

かわいそー。

死になれてしまってるあたし。
漠然と人事みたいにはーちゃんの死に思いを馳せる。

まー、どうせ明日の朝には「女子高生イジメを苦に自殺!?」なんて謳い文句でメディアの餌になるんだろう。

死に慣れてしまってるあたし。死に慣れてしまってる世間。

あー、しにたい。